茨城県・福島県いわき市でクリニックの開業を考えている先生へ。医師の少ない地域だからこそ起こりやすい「休めない院長」にならないための準備を、厚生労働省・日本医師会の調査と、医院や調剤薬局の建築に携わってきた経験をもとにお伝えします。
医師の少ない地域で開業すると、患者さんに頼りにされる一方で、院長が休みにくくなることがあります。
私たち益三建設は、昭和22年に日立市で創業して以来、茨城県と福島県いわき市を中心に、医院・クリニックや調剤薬局などの建築に携わってきました。開業のご相談では、理想の医療とあわせて「地域の患者さんに長く通ってもらえる医院を、無理なく続けたい」というお話を伺うこともあります。
この記事の結論
- 茨城県は人口あたりの医師数が全国46位、人口あたりの診療所数は全国で最も少ない県です。開業すれば頼られやすい分、院長1人に負担が集まりやすい地域でもあります。
- 開業医には、勤務医のような時間外労働の上限がありません。日本医師会の調査では、開業後に労働時間が重くなった院長が41.6%いました。
- 休める仕組みは、2つ目の診察室、院外処方で薬局と分担する配置、スタッフが動きやすい受付まわりなど、開業前の計画でつくることができます。
医師の働き方改革とは?開業医が知っておきたいポイント
医師の働き方改革とは、2024年4月から、勤務医の時間外・休日労働に上限を設けた制度です。原則の上限は年960時間で、地域医療を担う医療機関の医師などには年1,860時間までの特例があります。
制度の対象は雇われて働く医師で、院長には直接は適用されません。ただし、開業後に医師を雇う場合は、その医師の労働時間を管理する立場になります。
勤務医の長時間労働は減っている
厚生労働省の令和7年の調査では、週60時間以上働く病院の常勤勤務医は15.0%で、令和元年の37.8%から大きく減りました。診療科別では、外科(25.1%)や救急科(23.7%)が高く、皮膚科(5.3%)、眼科(7.7%)、精神科(8.1%)は1割未満です。内科は13.6%、整形外科は15.0%でした。いずれも病院で働く医師のデータです。
出典:厚生労働省「(参考資料)医師の働き方改革の現状について」令和8年度 医師の働き方改革の推進等に関する検討会(2026年9月10日)※令和7年度「医師の勤務実態把握のための調査事業」
茨城・いわきの医師数・診療所数から見る開業の環境
| 項目 | 茨城県 | 福島県 | 全国 |
|---|---|---|---|
| 医療施設で働く医師(人口10万人あたり・2024年) | 198.1人(47都道府県中46位) | 238.8人 | 267.4人 |
| うち市(2024年) | 水戸市 289.1人 | いわき市 187.7人 | ― |
| 一般診療所(人口10万人あたり・2025年) | 63.1施設(47都道府県中47位) | 77.1施設 | 85.8施設 |
| 一般診療所の5年間の増減(2020→2025年) | 17施設増(+1.0%) | 5施設減(−0.4%) | 2,909施設増(+2.8%) |
茨城県は、人口あたりの医師数が全国46位、人口あたりの診療所数は全国で最も少ない県です。いわき市も人口10万人あたりの医師は187.7人と、全国の約0.7倍にとどまります。
診療所が少ない地域は、開業すれば患者さんを見込みやすい一方で、代わりに診療してくれる非常勤の医師を見つけにくく、院長が休みにくくなりがちです。患者さんが集まりやすい分、診療時間を延ばすのではなく、Web予約や2つ目の診察室の準備などで「1人で抱え込まない仕組み」を最初から考えておくことが大切です。
開業医の働き方をデータで見る
日本医師会が開業医1,984人に行った調査(2009年)では、開業後の労働時間が勤務医時代より「軽減した」院長は35.6%、「過重になった」院長は41.6%でした。開業すればゆとりが生まれる、とは言い切れない結果です。
負担の内訳を見ると、勤務医時代に重かったものの1位は当直(44.5%)で、開業してから重くなったものの上位はスタッフの採用(65.1%)とレセプトの作成・チェック(52.2%)でした。当直の代わりに、人と事務の仕事が院長の肩にかかってくる形です。
同じ調査で、無床診療所の院長は週に平均4.95日診療していました。
出典:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」2009年9月
開業の動機は「過重労働」
同じ調査で、開業して5年以内の院長の31.7%が、開業の動機として「勤務医時代の過重労働に疲れたため」を選んでいます。働き方を変えるための開業が、かえって忙しさを増やす結果にならないよう、計画の段階での工夫が欠かせません。(関連コラム:医師が独立を決断する5つの理由と開業を阻む3つの壁)(関連コラム:クリニック開業の失敗リスクと回避方法)
1人で抱え込まないための開業計画
医師の少ない地域で院長が休めるかどうかは、開業前の計画で大きく変わります。資金計画とあわせて検討しておきたい点を紹介します。(関連コラム:クリニック開業に必要な資金)
院外処方と薬局の配置を最初に考える
院内で薬を出すと、調剤や在庫の管理、薬の発注までクリニックの仕事になります。近くに調剤薬局が入れる配置で院外処方にすれば、その分の仕事を薬局と分担できます。土地を探す段階から、薬局の場所と患者さんの動き方をあわせて検討しておきましょう。
2つ目の診察室で「代わりの医師」を迎える準備をする
医師の少ない地域では、非常勤の医師を見つけるのに時間がかかります。だからこそ、見つかったときにすぐ迎えられるよう、2つ目の診察室を用意するか、後から増やせる設計にしておくことをおすすめします。
受付と事務の負担を減らす
Web予約や自動精算機は、置き場所と配線を設計の段階で決めておくと、後から無理なく導入できます。受付の混雑が減れば、スタッフの残業も、診療後の締め作業も軽くなります。(関連コラム:クリニック設計で押さえたい6つのポイント)
車で通う患者さんとスタッフのために
茨城県や福島県いわき市のエリアは、都市機能が集まる街から自然豊かな郊外まで生活圏が広く、日々の移動に車が欠かせない地域です。ゆったり停められる駐車場の台数や、幹線道路・生活道路からの入りやすさも患者数を左右します。益三建設は不動産業も営んでおり、土地探しの段階から診療圏調査を行い、「この場所なら希望の診療時間でも採算が合うか」を確認したうえで計画を進めます。
住まいとの距離
生活圏が広いからこそ、自宅から無理なく通える場所を選ぶことが毎日のゆとりにつながります。クリニックと住まいを一つにする「医院併用住宅」にすれば、通勤時間そのものをなくすこともできます。その場合は、クリニックと住まいの玄関や動線を分け、仕事と生活を切り替えられる間取りにしましょう。スタッフの多くも車で通勤するため、スタッフ用の駐車場もあわせて計画しておくと安心です。
益三建設の施工実績から:薬局と一体で考える開業計画
調剤薬局の建築実績を活かした計画
益三建設は、医院・クリニックのほか、アイセイ薬局・ベル薬局・クオール薬局など調剤薬局の建築も手がけています。院外処方にして近くに薬局が入れる配置を計画すると、院内での調剤や薬の在庫管理がなくなり、院長とスタッフの仕事を減らせます。土地探しの段階から、薬局の出店場所や患者さんの動線もあわせて考えることをおすすめします。(益三建設の施工事例)
整形外科・歯科医院・内科病院の施工事例
整形外科や歯科医院、提携する設計事務所の設計による内科病院・美容クリニックなど、さまざまな医療施設の施工に携わってきました。診療科ごとに必要な部屋や機器が違うため、働きやすさを左右する動線も変わります。(益三建設の施工事例)
よくある質問
Q. 医師が少ない地域で開業すると、休みは取れなくなりますか?
A. 患者さんに頼られる分、休みにくくなることはあります。休診日をあらかじめ決めて知らせておくこと、非常勤の医師を迎えられる診察室を用意すること、院外処方で薬局と仕事を分担することなどで、院長が休める体制をつくれます。
Q. 開業医の診療日数はどのくらいですか?
A. 日本医師会の調査(2009年)では、無床診療所の院長の診療日数は週平均4.95日でした。休診日は自分で決められますが、休む日はクリニックも休診になります。
Q. クリニックで医師を雇う場合、働き方改革の上限は関係しますか?
A. 関係します。院長自身には上限規制は直接適用されませんが、雇った医師には時間外・休日労働の上限が適用されます。
Q. 茨城・いわきでワークライフバランスを重視してクリニックを開業するには?
A. 茨城県は人口あたりの診療所が全国で最も少なく、患者さんを見込みやすい一方、代わりの医師を見つけにくい地域です。診療時間を延ばすのではなく、Web予約や2つ目の診察室の準備など院長1人に負担が集中しない仕組みを考えておくことが大切です。そのうえで、ゆったり停められる駐車場と道路からの入りやすさを確保します。
まとめ
- 茨城・いわきは人口あたりの医師や診療所が少なく、開業すれば頼られやすい一方、院長が休みにくい地域です。
- 開業後は当直がなくなる代わりに、採用やレセプトなどの仕事が増えます。労働時間が重くなった院長も約4割います(日本医師会、2009年)。
- 院外処方と薬局の配置、2つ目の診察室、受付の効率化など、1人で抱え込まない仕組みを開業前に整えておきましょう。
益三建設では、茨城県・福島県いわき市エリアで、働き方にゆとりのあるクリニック開業を検討している先生のご相談を承っています。
- 「医師の少ない地域で開業したいが、休めるか不安」
- 「薬局の配置も含めて土地を探したい」
- 「将来、医師を増やせる建物にしたい」
まだ構想の段階でも、お気軽にご相談ください。
この記事について
執筆:ドクター建築ラボ@IBARAKI(益三建設)。昭和22年(1947年)日立市で創業。
監修:益三建設株式会社 代表取締役社長 益子朋
主な参考資料:厚生労働省「医師の働き方改革の現状について」(2026年9月)、厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」(令和2年・令和6年)、厚生労働省「医療施設(動態)調査」(令和2年・令和7年)、日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」(2009年)
お問い合わせ・会社情報
益三建設株式会社
茨城県・福島県いわき市の医療建築のスペシャリスト。先生の夢に寄り添い、経営を支える建物をご提案します。
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